耐火物とは Vol. 13~耐火物原料:ジルコン、ジルコニア
本稿では耐火物原料としてたいへん有用なジルコニア(ZrO2)およびジルコン(ZrO2-SiO2, ZrSiO4)について説明します。
ジルコニアとジルコン 両者は完全に別物です。よく混同して話す方を見かけますが、完全に違います。前述したように、ジルコニアの化学組成はZrO2で、ジルコンはZrSiO4です。表1に両者の違いを比較しました。ご覧のとおり別物であることがおわかりいただけます。類似する点をあえて言うと、ジルコンからジルコニアが製造されることです。
表1

原料 ジルコニアの原料は2つあります。ひとつはジルコン鉱石(ZrSiO4:純度約48%)で組成式に示したようにSiO2と化合物をつくり、地球上に広く産出します。硬度が高く風化や変質に強い鉱物で、砂岩などの堆積岩にみられます。産出した鉱石は選鉱され、図1に示すジルコンサンドと呼ばれています。天然に産出すると不純物を含み、写真のように赤褐~黒褐色を呈しています。

図1
もうひとつは、図2に示すバデライト鉱石(ZrO2:純度約72%)で、Ca, Fe, Hf, Si, Tiなどの不純物元素を含みますが、主な組成はZrO2です。バデライトはジルコンと異なってシリカ成分の少ない火成岩中に形成され、カリウム長石(アルミノケイ酸カリウム、KAlSi3O8)や斜長石(アルバイト(NaAlSi3O8)とアノーサイト(CaAl2Si2O8)の固溶体)を含む岩石に存在しています。ジルコンやバデライトを精製して純度を高めたものが、ジルコニアであることをご理解いただければ幸いです。

図2
ジルコニアの原料の世界産地を図3に示します(出典:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMEC)。地球上に広く産出しますが、残念ながら日本で産出されません。また、採掘には多大なコストかかるため、大規模な産地はおもに南半球に多くあります。インドネシアやオーストラリアで産出することは地政学上、日本にとってたいへんよい場所と言えます。

図3
ジルコニアの原料を輸入する日本の相手国を図4に示します(出典:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMEC)。産地はアフリカ、東南アジアおよびオーストラリアが主なところです。このような状況で日本は図3に示すようにオーストラリアから半分以上輸入しています。前述したように、ジルコニア原料もオーストラリアから多くを輸入していることがわかります。アルミナ原料のボーキサイトと同じような構図です。注)図の統計は2020年のものですから、現在ロシアからの輸入はないでしょう。

図4
製法、特性および用途 ジルコニアの精製には乾式法と湿式法があります。乾式製法は、マグネシアの回で紹介した電融法がもちいられています。製造物は電融ジルコニアとして販売されています。ジルコニアの売りは何と言っても高温下での耐食性および耐摩耗性です。スラグやメタルに対して優れた耐食性があり、耐火物、セラミックス、鋳造用砂等の構造材料や研磨材に用いられています。
製造工程中にマグネシウムやカルシウムを安定化剤として加えたカルシア安定化ジルコニアあるいはマグネシア安定化ジルコニアが生成します。カルシア安定化ジルコニアは鉄鋼向け連続鋳造ノズル、ロングノズル等に使用されています。ほかにも研磨材や顔料、ブレーキパッド粉などがある。なぜ安定化させる必要があるか?ご存じの方が多いと思いますが、別に説明の機会を持ちます。
湿式製法は鉱石を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムとともに加熱処理して溶解し、これを塩酸で中和したあと、沈殿物をろ過抽出することでオキシ塩化ジルコニウムが得られます。これを加水分解すると高純度のジルコニアが生成します。
高純度のジルコニアは触媒、コンデンサ、センサーなど機能性セラミックス原料として主にファインセラミックス原料、酸素センサーとして使用されています。さらに、光学ガラスの添加剤、吸着剤、塗料乾燥剤、溶射材料など多岐にわたります。
とりわけ、イットリア(Y2O3)を安定化剤として添加したイットリア安定化ジルコニアは、構造用セラミックスとしてたいへん優秀で人工歯科材料(クラウン、インレー、コンポジットレジンブロック等)、光コネクタフェルール、粉砕メディア、切削刃物などの用途でも使用されています。


