半導体:光と熱との関わり Vol.5
今回はp型半導体を説明していきます。
不純物のドーピング 前回と同じ項目ですが、真性半導体の電子構造は添加物によって意図的に変えられます。高純度シリコンに異種元素を不純物(ドーパント,Dopant)として添加して半導体の特性を改質するドーピング(Doping)が採られています。
p型半導体 シリコン真性半導体をp型半導体に変化させるドーパントは、シリコンの価電子より1個電子が少ない元素が選択されます。図1に示す周期表を見ると、14族のシリコン(Si:緑枠)の左上の元素はホウ素(B:赤枠)です。周期表でシリコンの左側の13族元素の価電子数は1個少なくなります。

図1
図2に示すように、シリコン(Si)の電子は3sと3p軌道に4個存在し、これが価電子です。一方で、ホウ素(B)は2p軌道に電子が1個だけで、価電子の合計が3個です。ちなみに価電子の軌道の大きさが異なりますが、シリコンは第3周期の元素で主量子数が3ですが、ホウ素は第2周期の元素で主量子数が2であるためです。

図2
ホウ素をドーピングしたシリコンの結晶格子を二次元で表すと図3のようになります。シリコン原子を置換したホウ素原子は電子が1個少なくなります。シリコン原子とホウ素原子が結合を形成した結果、シリコンから電子を供給されたホウ素原子は負の電荷をもちます。一方で、電子が1個少なくなったトータルの電荷を補償するため、ホウ素原子の周囲には正の電荷を帯びた空孔(正孔:Hole)が生成します。負電荷を帯びたホウ素原子は正孔を束縛して電荷を補償しますが、その際シリコン原子から電子を捕捉しやすい(ホウ素原子近傍の正孔にシリコン原子から電子が近づきやすい)状態となります。正孔は正(Positive)の電荷をもつため、Positiveの頭文字をとってp型半導体と呼ばれます。p型半導体に変化させるドーパントはホウ素の他にアルミニウムやインジウムがもちいられます。

図3
電子構造 ホウ素を添加したことで正孔が生じ、電子が動きやすくなります。電子を受け取る機作が働くので、ドーパントのホウ素を電子アクセプターといいます。この電子のもつエネルギーはアクセプター準位として価電子帯の上端よりわずかに上に生成します(ホウ素がシリコンの価電子帯から電子を容易に受け取ることができるため、エネルギー差が少ない)。その電子構造を図4に示します。

図4
価電子4個のシリコン真性半導体に価電子3価の微量元素(ホウ素、インジウムなど)をドーピングすることによって電子が1個不足します。電子が欠損するので総電荷を補償するために正電荷をもつ空孔(正孔)が生成し、価電子帯上端の上側の禁制帯中にアクセプター準位(EA)を形成します。正孔はシリコンの価電子から電子をすぐに結合するため、動いた電子のもともとの位置に正孔が移動したように見えます。これはまさに、正電荷をもつ正孔がキャリアとして動いている状態となります(実際は電子が動いている)。電荷をもつキャリアが動くことはすなわち、通電回路が形成されることを意味しています。これはn型半導体の場合と同じ現象が起きています。価電子帯上端とアクセプター準位(EA)のエネルギーギャップ(差)が小さいので、光や熱の外部刺激によって価電子帯の電子が励起されるエネルギーが小さく済みます。フェルミ準位EFはアクセプター準位に接しておらず、電子は特定のエネルギーをもつ外部刺激にしか励起せず、導体のような通電は起こりません。p型半導体も通電させたり絶縁させたりと、電気伝導性を制御(スイッチング)することが可能となります。違いはキャリア発生に起因する電荷が正か負の違いだけです。


