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半導体:光と熱との関わり Vol.3

今回はいよいよ半導体を説明する核心部に入っていきます。よろしくお願いします。

半導体  「半導体」を調べると、つぎのような文章が検索結果に表れます。“電気を通したり通さなかったりできる、導体(金属など)と絶縁体(ゴムなど)の中間の性質を持つ物質や、それを材料にした集積回路(IC)などの電子部品の総称です。特定の条件下で電気の流れを制御できる性質を活かし、コンピュータやスマートフォン、家電製品、自動車など、あらゆる現代社会に不可欠な電子機器の頭脳や機能部品として使われています。”1)

著者は素材の側からアプローチして研究や商品開発をしているので、半導体という意味を前述のような物質として扱ってきましたが、前述の内容では電子部品、いわゆるデバイスの総称とされることもあることに驚きました。一般的に回路が載った基板をイメージする方も多いのでそのような位置づけになっているのかもしれません。見出しにもそのようなイメージ図をもちいました。とはいえ、本編も引き続き、物質からの目線で半導体にアプローチしていきます。

電子構造  図1に半導体の電子構造を示します。比較として、導体と絶縁体の電子構造もあわせて掲載しました。電気を通したり通さなかったりする理由はなんでしょうか。通電するキーポイントはキャリアである電子が生じるかどうかです。図1(a)に示す導体の電子構造と図1(c)に示す絶縁体と比較すると、価電子帯と伝導帯が空間的に離れた構造を形成して、その空間に禁制帯ができることを前回説明しました。図1(b)を見ると、半導体では価電子帯と伝導帯が空間的にやや接近し、禁制帯の幅(バンドギャップ)が絶縁体よりも小さくなることがわかります。半導体の価電子帯の電子は絶縁体と同様に基本的に自由に動けません。ただ、半導体はバンドギャップが小さいので“条件が整えば”電子が動けるようになります。これが電気を通したり通さなかったりする理由をもっとも簡単に説明しています。なぜバンドギャップが小さくなるのか、それは物質固有の本来持ち合わせた性質になります(後続の稿で電子構造が形成される理由とあわせて説明します)。

図1

真性半導体  “真性”という言葉に身構えますが簡単です。不純物を含まず極めて純粋な状態のことを指します。その例として超高純度シリコンが挙げられます。基本的に単一元素からなる半導体のことを言うそうですが、化合物半導体の場合でも純度が高いものを指すことがあります。真性半導体の電子構造はまさに図1(b)に示すもので、フェルミ準位は禁制帯の中央に位置します。真性半導体において光や熱のエネルギーによって通電回路ができる場合、キャリアとなる電子は価電子帯から伝導帯への励起によってのみ生成します。代表的な真性半導体の材質は図2の赤枠内に示すシリコンとゲルマニウムです。これら2つの単体は周期表の同族元素で似た性質を持ちます。

図2

電子配置  シリコンとゲルマニウムの電子配置を図3に示します。s, p, dのアルファベットは電子が周回する軌道の種類、1, 2, 3, 4は主量子数という軌道のサイズ(径のようなもの)、上付き数字は各軌道に格納される電子数を表しています。s軌に2個、p軌道に6個、d軌道に10個それぞれ電子が格納できる最大数です。赤に反転した部分は各原子の価電子に相当する電子を表しました。価電子は他の原子との反応などで原子間結合を形成するときに使われる電子です。価電子は導体(金属)でいう自由電子に相当します。高校化学で説明すると、K, L, M殻にそれぞれ格納された電子というと理解できるかもしれません。すなわち、シリコンは最外殻に電子を4個持っています。ゲルマニウムも最外殻に同じ電子数をもつことがわかります。ちなみに、両者の価電子数が等しいため、シリコンとゲルマニウムは似たような性質を持っています。

図3

結晶構造  最外殻電子(価電子)は結合形成に寄与することはシリコンの結晶構造で説明できます。図4にシリコンの結晶構造を示します。ちょっとわかりにくいですが、この結晶構造はダイヤモンドと同じで、1個のSi原子は4個のSi原子と結合しています(ちなみに炭素とシリコンも周期表で同じ族)。価電子数が4個なので、Si-Si結合をつくるときに互いに電子を1個ずつ共有し、合計4つの結合が形成されます。

図4

これを二次元で表すと図5のようになります。シリコン原子同士の結合に2個の電子が使われています。この図から価電子がすべて結合形成に使われてます。導体である金属のような自由電子は存在しないことがわかります。この結晶構造から高純度シリコンは真性半導体となり、ほとんど電気が流れません。シリコンの禁制帯の幅(バンドギャップ)は1.2 eVであることがわかっています。半導体として作動させるためには波長が1030 nmの電磁波(赤外線)を照射することが必要となります。

図5

不純物のドーピング  真性半導体の電子構造は添加物によって意図的に変えることができます。シリコンよりも価電子が多い元素と少ない元素を添加物(不純物として)含む半導体は、真性シリコン半導体と比較して総電子数が変わって、電子構造が変化します。つぎの稿で紹介します。

1) 一般社団法人 日本半導体製造装置協会Webサイト

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