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半導体:光と熱との関わり Vol.2

初回の導体に引き続いて、今回は絶縁体(不導体)を説明します。

絶縁体  「絶縁体」とはなにか、前述したように言い換えると「不導体」となります。電気が流れない材質のことです。電気を流すキャリアは電子であると前回説明しましたが、絶縁体は電子が自由に動けません。その理由も電子構造からすべてわかります。図1(a)に絶縁体の電子構造を示します。図1(b)に示した導体との違いは、価電子帯と伝導帯が空間的に離れた構造をしています。この空間には電子もなにも存在できません。そのため、この空間を禁制帯と呼び、その幅をバンドギャップと呼んでいます。

図1

図2(a)に示すように絶縁体の場合、禁制帯の中に位置するフェルミ準位まで電子が動くことができません。もちろん、バンドギャップを超えるエネルギーをもつ光(電磁波)を電子が受ければ、価電子帯から伝導帯へ遷移して、電気回路が点きます。しかしながら、そのような高エネルギーをもつ電磁波は限られ、このような方法でわざわざ電気を生み出す必要はありません。電子が動けない絶縁体は、キャリアとなる電子が生まれにくく電気がほとんど流れません。一方で、図2(b)に示す導体の場合、自由電子が存在することで回路上を電子が移動することによって電気が流れ、電球が点灯します。

図2

電気がほとんど流れない絶縁体も産業上たいへん重要な用途があります。絶縁体の種類はさまざまにあります。ガラス、セラミックス等の無機化合物だけでなく、ゴムや油(絶縁質)、プラスチック、木材などの有機系化合物が挙げられます。導体の金属に電圧を印加すると電流が流れますが、絶縁体に電圧を印加しても通電しません。電柱に電線をつなぐ碍子(がいし)には今もセラミックスが採用されていたり、回路基板に樹脂がもちいられたり、高電圧トランスに電極間のショートを防いだり漏電を予防するための絶縁油など産業やインフラ面で多用されています。

電気が流れないと一方的に記載しましたが、その指標として電気抵抗率がもちいられます。絶縁体と導体の電気抵抗率を表1にまとめました。先だって、多種の絶縁体の例を挙げましたが、ここではセラミックスに絞り、導体である金属の特性値と比較しました。ほとんどのセラミックスの電気抵抗率はおおよそ1010 Wcmかそれ以上であり、ほぼ通電しません。導体の金属と比較すると20桁程度高くなり、数値的な大差がわかります。また、絶縁体と熱との関係も明確にあります。電気抵抗率が高くなると熱伝導率が低くなる傾向があります。表1に併記した熱伝導率を見ると、絶縁体のセラミックスでおよそ2~100 W m-1 K-1であるのに対し、金属で100以上と大きな差があることがわかります。このような傾向はキャリアである電子が熱の移動にも関与していることを如実に表しています。ちなみに、表1でひと際異彩を放っているのが窒化アルミニウムです。セラミックスでありながら、その熱伝導率が金属をしのぐ大きさを持っています。その反面、熱伝導率は通常のセラミックスと同じく高い絶縁性を示します。熱を通すが電気は通さない性質をもつ窒化アルミニウムはさまざまな用途が広がりつつある素材として期待されています。

表1

つぎに、絶縁体と光の関係について考えてみます。絶縁体の禁制帯幅(バンドギャップ)の数値を表2にまとめました。光(電磁波)の種類によっては、絶縁体であっても価電子帯の電子を伝導帯へ遷移(飛び上がる)せることができます。電子が遷移した現象を励起状態といいます。表2に示した代表的なセラミックスのバンドギャップは3 eV以上あり、波長に換算して400 nm以下の短い電磁波を照射することで電子を励起させることが可能です。つまるところ、表2のセラミックスを励起させる電磁波の色はなく、セラミックスの色も透明から白であるものがほとんどです。

表2

ここで目を引くのが炭化ケイ素のバンドギャップが3.3 eVであり、色も灰~黒~黒緑などを呈しています。この数値は絶縁体のものではなく、むしろ半導体のカテゴリーに入る大きさです。炭化ケイ素はワイドバンドギャップ半導体と呼ばれ、高耐圧、高耐熱、低損失という優れた性質が現れます。このような性質は次世代半導体としてシリコン半導体をしのぎ、パワーエレクトロニクス分野で機器の小型化、効率化、信頼を高めることが期待されています。

このように、絶縁体であっても光や熱との関係があり、それは電子の動きによって支配されていることがお分かりいただけると思います。

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