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光と波長とエネルギー Vol.3

今回は「光と波長とエネルギーVol.3」として可視光線より長波長側の光について説明します。

赤外線とは  赤外線(せきがいせん)の名付け親はドイツの天文学者ハーシェル(図1左)です。プリズムで分光した太陽光スペクトルの色に合わせて寒暖計を動かすと、赤を通り過ぎて色がなくなった部分で寒暖計の数値が上昇することを1800年に発見しました。いまでこそ可視光線と同じ電磁波であることは当たり前に知られていますが、1853年にフランスの物理学者アンペール(図1右)が電磁波であることを見出しました。発見されてから電磁波であることを確認されるまでかなり時間を要しましたね。赤外線は赤色の可視光線より波長が長く、0.8~100 mm(=800 nm~100000 nm)の広範囲を占める電磁波です。たった2行ほどに記した事柄ですが、基礎研究から導かれた先人の偉大な業績を学べることに感謝しかありません。

図1

英語ではinfrared(読み方:インフラレッド)といい、「赤より下側」を意味しています。Vol.1で触れたように日本語では、赤外=赤の外側を表しています。infraは「下、下部」などを指す接頭辞でインフラストラクチャー(“下部構造”:下支え、基盤の意)が代表される言葉でしょう。ここから社会インフラ、情報インフラなどと略された言葉を耳にする機会が多いと思います。また、infraredは分光学でIRと略され、昨今は略称の方が通じやすいかもしれません。

赤外線の種類  赤外線は広範囲の波長のなかでさらに3つの種類に大きく分けられます。それを図2に示します。それぞれの応用先の身近な例を挙げますと、0.8~2.5 mmの近赤外線はナイトビジョンカメラ(暗視カメラ)に用いられています。夜間の監視カメラや強烈な光に弱い生物、物質を対象に照明やストロボなど明るい光の代わりに近赤外線を照射して撮影します。2.5~8.0 mmの中赤外線は赤外線カメラ(サーモグラフィ)に用いられています。この場合、中赤外線は発熱する物体から常に放出されていて、赤外線カメラはそれを検出しています。夜間や煙の中など視界が悪い場所での熱源を検知することで消火活動の際に要救護者の存在のチェック、炎の確認等に使われています。中赤外線は空気中で減衰しにくいため、遠く離れた場所の物体を認識できる特性を利用して海上交通や軍用など産業上幅広い分野で用いられています。8.0~100 mmの遠赤外線は、もっとも長い波長の赤外線です。これは「熱線=熱を感じる電磁波」の最たるもので冬場使用するカーボンヒーター、ハロゲンヒーターなどを思い浮かべることができます。

図2

なぜ暖まるか?  図3に示すように焚火をすると暖かく感じるのは、炎から発した赤外線によって皮膚が温められた効果であることを過日お知らせしました(耐火物とはVol.1からここで繋がりました)。上述したように赤外線は空気に遮断されません、すなわち、空気を暖めません。人体表面付近で赤外線が吸収され発熱することで暖かみを感じています。

図3

赤外線で加熱される原理をもう少し説明します。電磁波である赤外線が波長に応じたエネルギーをもつことは、前回説明したプランクの関係式から同じように説明できます。図4に示すように、ある光源から赤外線が放出されて物体に到達すると①表面で反射、②物体に吸収、③そのまま透過の3つの状態に分かれます。これらのうち、物体に赤外線が吸収されるときその物体が発熱します。赤外線を吸収する理由は、物体の分子構造や結晶構造に由来、もっと簡単にいうと分子1つずつが赤外線の波長に共振することで振動します。これは分子全体が赤外線に共振している状態です。共振が起こる分子全体が動き回るようになって発熱しはじめます。

図4

例として、水分子が振動する状態は図5に示すように、O-H結合の伸縮振動、H-O-H結合角が開閉する変角振動の2つがあり、それぞれの振動を誘発させる赤外線の波長が異なります。

   

図5(左からOH結合対象伸縮振動、OH結合非対称伸縮振動、HOH結合角変角振動)Wikipediaより

ちなみに、それぞれの振動を起こす振動数はわかっていてそれぞれ図6に示します。波長に換算すると各振動モードは中赤外線の範囲であることがわかります。

図6

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