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光と波長とエネルギー Vol.2

今回は「光と波長とエネルギーVol.2」として前回に引き続いて科学的な現象の原理的な視点におき、可視光線より短波長側の光について説明します。

スペクトルとは  前号に示したプリズムによって白色光が可視光線の波長別に紫から赤色に分類されることを説明しました(図1として再掲)。これを科学的にいうと、“白色光を380~780nmの範囲の波長ごとに分解した状態”といい、この場合、白色光の分光スペクトルといいます。一般的にスペクトルとは、ある組成(この場合、白色光のこと)を成分(この場合、波長のこと)ごとに分解し、各成分の量を並べた状態(この場合、七色の並び)と表します。

図1

紫外線  紫外線は太陽から常に放射され続けている電磁波のひとつです。図2に太陽光スペクトルを示します。図の見方は横軸が波長を表し、縦軸に波長ごとの光の強度を任意単位で表しています(前段で説明したスペクトルを意味することがわかります)。この図は黄色の範囲の可視光線の強度がもっとも高いことを表しています。この左側の紫の範囲で示す380nm以下の波長の光もある程度強度を維持しています。一方で、同じ範囲の「地表での太陽光スペクトル」の強度は小さくなっています。

図2

この要因は、紫外線の波長が通常100 nmから380 nmとされ、範囲別にUV-A(315~380 nm)、UV-B(280~315 nm)、UV-C(100~280 nm)の3つに分類されています。波長がより短いUV-BやUV-Cは地球の大気(酸素の光吸収)およびオゾン層(オゾンの光吸収)で遮断され、地上の太陽光に含まれる割合がほとんど無くなります(図3)。その結果、UV-BやUV-Cは地表にほとんど届きません。一方で、UV-Aが地表までしっかり届いています。

図3

紫外線のなかでも波長の短いUV-Cは、人間を含む生物にときに悪影響を与える光です。紫外線のもつエネルギーが強いためです。エネルギーの強弱をわかりやすくいうと、可視光線を浴びても日焼けしませんが、紫外線を浴びると日焼けすることがあります。これは紫外線の光が高いエネルギーをもつためです(詳細は後続の稿で説明)。高いエネルギーがゆえに照射された面を損傷させたり、あるいは活性化させたりします。この効果を逆手にとって、殺菌あるいは濡れ性向上など洗浄、清浄する作用が期待できます。

紫外可視吸収スペクトル  図4に二酸化チタン(TiO2)の250-800 nmの範囲の紫外可視吸収スペクトル(拡散反射法)を示します。この図は試料を二酸化チタンの粉末として、250-800 nmの赤外線~紫外線までの光を波長別に照射し、試料が反射(吸光)した光量を示しています。図からわかることは、波長400 nm以上の光はほとんど反射(吸光)していないことと、400 nm以下の波長の光は波長が短いほどたくさん反射していることです。この結果は二酸化チタンが紫外線より短い波長の光を受けると活性をもつことを示しています。二酸化チタン粉末の色は白を呈していますが、すべての可視光を吸光しないことが原因です。このような性質のため白色顔料として非常に有用な材料です。

図4

着色した粉末であれば、なんらかの可視光を吸光していることが想起されます。ちょっと思考実験をしてみましょう。図5は色の関係を示す色相環といいます。色相環をもちいると、ある程度どの波長の光に反応しているか推測することができます。たとえば、黄色(約580 nm)に発色した粉末は、黄色の光を反射しているのではありません。黄色の補色である青色(約450 nm)の波長の光を吸収し、それ以外の波長の光を反射することで黄色が発光しています。図に示した補色はこのように理解することができます。青色に発色する場合は、逆の関係が成り立ちます。これを読んでくださった方は、身近な色で思考されてみてはいかがでしょうか。

図5

思考実験ができれば、実際に紫外可視吸収スペクトルを計測する前にどんな形の測定結果が得られるのかある程度想像することができます。事前になにも考えず、ただ測定結果を考えるよりは、なにかの解を得えやすくなるでしょう。

さらに短い波長の電磁波  紫外線よりも短い波長の光(電磁波)は、身近にありません。前号で波長が10 nmまでは紫外線の範囲ですが、それより短い電磁波はX線と呼びます。病院でレントゲンやCT撮影などに使用されています。X線とはなにか調べると、「①波長が非常に短く、②エネルギーの高い電磁波の1種であり、③物質を透過する性質」と説明されます。①波長は0.001 nmから1 nmです。この波長は原子や分子サイズの世界に対応できます。科学計測でX線が使われる理由のひとつで、波長が化合物の原子間結合距離に対応するので化合物の情報を引き出すことができます。②は後述します。③物質を透過することはレントゲン写真で皆様よくご存じですが、X戦は基本的に人体を通過できますが、骨や異物(腫瘍等)は通過できません。レントゲンやCT写真で白く映った骨の部分はX線が通過しなかった証拠となります。X線にも種類がいくつかあります。別の機会で解説しましょう。

電磁波のもつエネルギー  前述したX線の特徴として②エネルギーの高い電磁波の理由を説明します。図6はアインシュタインによる光量子仮説から導かれる波長とエネルギーの関係式を示します。これは物理学ではたいへん有名な関係式で、物理学の発展に貢献した『光電効果』を証明したものです。光のエネルギーがその振動数に比例する関係を示しています。ここでは振動数が速度を波長で除した関係(ν=/λ)をもちいてさらに展開させました。

図6

電磁波の速さ(光速)は一定であり、プランク定数hも一定数であるから、式の分子は定数となります。すなわち、分母の波長が短く(数値的に小さく)なれば、その逆数であるエネルギーが大きくなることわかります。波長の短い電磁波は原子・分子レベルまで進入し、高いエネルギーをナノサイズの空間に与えることが可能になります。

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