耐火物とは Vol. 2~耐とは

「耐火物とは」と題してわかりやすさに主眼をおき、引き続いて説明する。
“耐火物”という言葉をその文字をそのまま読むと、火に耐える物。今回は「耐」について考える。耐をGoogle日本語辞書で調べると、「外からの変化に対してもちこたえる」とあり、用語として耐久、耐性、耐水、耐湿、耐火、耐震、耐熱などが挙げられている。“外からの”とは外部から及ぼされるさまざまな現象を区別なくひとまとめにしたものであろう。Vol.1で述べた「火」は、高い温度雰囲気のことであるから、耐火とは「ある高温雰囲気が及ぼす変化に対してもちこたえる」と言える。
高温下で耐えるべき特性はなにか。以下の4点にまとめられる。
1. 軟化して変形しないこと
2. 溶融材(溶けた金属、スラグあるいはガラスなど)に侵されないこと
3. 揮発したガス種に侵されないこと
4. 機械強度を維持しながら、温度変化によるき裂や割れが発生しないこと
であり、耐火物が備える基準はとても厳しい。つぎに各項目を俯瞰してみよう。
軟化して変形しないこと
耐火物の耐熱耐荷重変形を示す。言葉を補うと、(耐火物構造が高温雰囲気や外部圧力を受けて)軟弱になり、(構造体が)変形しないこと。
溶融材に侵されないこと
耐火物の耐侵食性や濡れ性を示す。耐火物は金属、スラグあるいはガラスなどの溶融材が注入されたり、流れたり、排出されたり用途が広い。流動する溶融材に絶えず晒される耐火物表面は稼働中に徐々に摩耗する。また、耐火物組織にき裂等が発生するとそれを契機に溶融材が組織中に侵入しやすくなる。一方で、耐火物表面が溶融物に濡れにくければ侵食や浸潤が起こりにくくなる。
揮発したガス種に侵されないこと
耐火物の耐腐食性を示す。高温の溶融炉内では雰囲気ガス、排気ガスなどさまざま。なかには耐火物を腐食させるガスが存在する。ガス種は耐火物の大小の気孔(構造組織内に形成される微細な空間)をとおして組織内に進入する。ガス種が耐火物の組成材と反応、蓄積して変質する。変質部は元々の組成と熱的性質が変化してき裂や剥離することで構造の崩壊につながりやすくなる。
機械強度を維持しながら、温度変化によるき裂や割れが発生しないこと
耐火物の耐熱衝撃性を示す。高温環境下で耐火物は圧縮や曲げの応力も加わり、それらの応力に耐える強度とそれを維持することも求められる。温度変化によるき裂や割れとは、熱衝撃性(別途、説明する機会を設けます)を意味する。卑近な例で説明すると、熱湯をガラスコップに注ぐとひび割れる現象や台所シンクに熱湯を垂らすと音がする現象など温度変化による柔軟性を示す因子である。
さらに、各項目に重要なパラメーターとして時間軸が加わる。耐火物が使用される時間である。操業開始すぐには変化がなくても時間を経るごとに脆化や腐食が進んだり、あるいは操業後すぐに劣化してもその進行具合が非常に遅かったりする。実際に使って判定できることもある。使用した耐火物の解析を繰り返し、改良を加えてきた技術開発の為せる業であり、耐火物の使い方は技術者の腕の見せどころだ。
1~4の耐火物の具備特性を喪失させる要因を次回以降からわかりやすく説明していきたい。