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耐火物とは Vol. 1~火とは

「耐火物とは」と題してわかりやすさを主眼におき、数回にわたって説明する。

“耐火物”という言葉を一般人との会話に出すとほぼ通じない。日常生活になじみのない言葉だからであるが、耐火煉瓦(れんが)の方がまだ通じやすい。昔、耐火物とはいわず耐火煉瓦としかいわれなかったからであろう。その耐火煉瓦もいまや数ある耐火物の中のひとつの材料である(直下図参照)。では、耐火物とはなにか?それを説明する前にまずもって「火」とはなにか?わかっていたつもりでも漠然として、むしろわからない。耐火物その文字を分解してそのまま読むと、火に耐える物。耐火物をきれいに説明しようとするとこれまでの経験的に受け入れてきた理解しかないことに気づく。まずは「火」について考えてみる。

人類が火を使用しはじめた時期は50万年以上前からが定説のようである。人類が自発的に火を使った証拠を見つけるのは文献をあたっても難しいようだが、なんらかの自然現象(落雷や枝葉の摩擦によって森林が燃える火災だった想像する)をとおして火を手に入れたのであろう。この火は木質に含まれる炭素や水素が酸素と反応することによって暖かい熱に変わり、同時に赤色~黄色の明るい光を放出することで周囲を照らす光源にもなりえた。明るく暖をとれた当時の人類は感激したに違いない。

火の定義を生成AIに読み込ませると「可燃性の物質と酸素が高温で激しく反応して光や熱を発する現象」と返される。反応することによって高温が得られる方が妥当であるからAIの解釈は逆である(細かいことはさておき)。火の発生する順序を整理すると、激しい酸化反応が起これば高温が得られ、熱の発生と明るい光の放出が同時に起こる。少々かしこまっていうと、酸化燃焼によって熱源(赤外線)や光源(可視光線)となる電磁波が放出された現象である(直下図参照)。つまるところ、火とは燃焼された雰囲気が常温より温度が高い状態を示すと理解される。

結論をいうと、ある温度の燃焼雰囲気(=火)に耐えるモノが耐火物となる。一方で、“高温”といっても温度の範囲はさまざまである。なにをもって高温というか?その尺度が違うからである。たとえば、60℃のお湯はヒトの皮膚が火傷するかもしれない温度であり、皮膚の形、状態を維持できないかもしれず、ヒトにとって高温である。一方でプラスチック容器は60℃で形や状態を保ち続けられる。「何も変化しない≒壊れない」プラスチックは60℃の耐火物となりうる。温度が200℃、500℃、1000℃と上昇していくと、それぞれの温度で何も変化しない材質がそれぞれの温度の耐火物ということができる。前述したプラスチックは500℃になれば変形したり、一部燃焼したりその形状を維持できず壊れてしまう。1000℃以上の高温域に目を向けると、耐火物を利用する業界に鉄鋼がある。ここで鉄をつくる詳細な方法には触れないが、簡単にいうと酸化鉄を含む鉄鉱石を高温で加熱すると酸化鉄が鉄に還元され、溶融状態(溶鉄)に変化する。溶鉄の温度は1500℃~1600℃であり、鉄鋼用の耐火物の場合、「火」はこの温度雰囲気を指す。

耐火物を使用する各業界は操業温度や使用環境が多種多様である。よって「火」が指し示す温度範囲も多種多様にあり、選択される耐火物の材質もそれに応じて存在すると理解くださると幸いである。