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耐火物とは Vol. 9~弾性と塑性

本稿では「弾性(だんせい)と塑性(そせい)」と題し、耐火物(構造体)に作用する外力による変形についてわかりやすい視点で説明します。

弾性と塑性、両者は反意語の関係にあります。ある構造体に一定の応力(≒外力)が加わってなんらかの変形が起こったと仮定します。弾性の性質をもつ構造体であれば、外力を取り除いた(=除荷した)ときに元の形の構造体に戻ります。これはVol.5で説明した、バネに重りを吊るした状態から重りを外せば元の長さのバネに戻る様と同じ現象です。図1に示した荷重と変位の関係から外力(荷重)を受けて変形(変位)しても、除荷すれば元の形状(変位が原点)に戻ることができる構造体のことを弾性体といいます。耐火物が弾性体ならば、き裂や割れを抑えられそうですが、外力に対して大きく変形しやすくなり目地開きが起こやすくなると予想できます。

図1

弾性体というとラバーやタイヤなどのゴム製品も思い浮かびます。ただし、ゴムは弾性に似た性質で、「粘り」が加わった「粘弾性」という性質をもち少し異なります。図2は粘弾性の荷重変位曲線を示します。初期の変位は小さく、荷重が急増するものの、変位が増加することで荷重が緩やかな増加に転じます。除荷すると急激に荷重が減少してその後変位しながらゆっくり荷重がゼロに戻っていきます。粘弾性体が印加したエネルギーを吸収し除荷することで失われたこと(ヒステリシス)が図2からわかります。

図2

一方で、除荷したときに元の形に戻らない構造体を塑性体といいます。この状況を「構造体が塑性変形した」といいます。図3に塑性変形の荷重変位曲線を示します。印加すると荷重と変位は線形の関係にあります。これは図1に示した変化と同じであり、この範囲を弾性域といいます。つぎに弾性域を通過すると変位量が大きくなりますが、荷重の変化はほとんどなくなります。これを降伏(点)といい、この点を過ぎると元の形状に戻ることができなくなります。降伏点を過ぎたバネは伸びてしまって元の長さまで縮まなくなったことがわかります。

図3

つぎにプラスチックなどの荷重変位曲線を図4に示します。弾性域はいずれの材質にも出現します。バネとは異なり、降伏点を境に塑性域が顕著に現れます。この塑性域でプラスチックが破壊していないのが特徴です。つまり、降伏点と通過し塑性域に突入してプラスチックの組織は壊れ始めていますが、まだ割れていないことを意味します。塑性変形は弾性変形を経由して生じることがおわかりいただけると思います。

図4

最後に、耐火物等のセラミックスの荷重変位曲線を図5に示します。プラスチックとの大きな違いは降伏点が存在しないことです。明確な塑性域は存在せず、ある荷重で破断します。これを脆性破壊といいますが、別に説明する機会を設けます。セラミックスは概ね図5の荷重変位曲線で破壊に至ります。

図5

弾性と塑性は外力を受けることで生じた構造変形が可逆なのか不可逆なのか、を表しています。セラミックスや耐火物等の素材は外力を受けることによって少し変形するものの、荷重を加え続けると破断します。塑性変形がほとんど起こらないことが特徴といえる構造体です。

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